ガンダムはなぜ強いのか

投稿者:産み猫氏


アニメ、機動戦士ガンダムに出てくる試作型モビルスーツガンダム。地球連邦軍が試作したこのモビルスーツは、対するジオン公国軍のモビルスーツZAKUの性能を完全に凌駕し、試作品であるにも拘わらず、誰もが驚くほどの戦果を挙げた。

「こんな事ってあるの?モビルスーツ開発で一日の長が有るジオンに、たかが急ごしらえの試作機で対抗できるの?」

と、皆さんは思われるであろう。しかし、こういう事は現実の世界ではしばしば起こることなのである。

第二次大戦前夜、ドイツ軍はベルサイユ条約で禁止されていた戦車の開発を、ソビエト領の奥地で密かに行っていた。大戦勃発初頭まで、ドイツとソビエトは、表面上の協力関係にあったのだ。しかし、このときソビエトの情報機関は、ドイツの戦車開発をつぶさに観察し、ドイツ戦車の性能、その弱点、そしてそれを上回る戦車を開発するにはどうしたらいいのか。

ソビエト軍の戦車開発はこの時既に始まっており、ドイツが現実にソビエト侵攻を開始した時点で、幾つかの試作品の中に、既にドイツ軍戦車ではどうにも太刀打ちできない強力な戦車が二種類出来ていた。これは、当時たった1両で、ドイツ軍の一個中隊(100人程度の規模)を1週間足止めさせたほどの画期的な物だった。 同様の事が、きっと地球連邦とジオン公国の間にあって、ガンダムは試作段階からあの様に強かったという想定のもと話しが作られたとしたら、これは充分有り得る事だと思う。

そしてもう一点、私が 兵隊(ではないと強硬に主張する人も居るようだが)だった時に、対戦車ミサイルの講義受講中、教官が挿話の一つとしてこんな話を持ち出してきた。

「諸君は、武器の試作品と量産品、どちらが高性能だと思うか」

との問いに対し、大方の受講生は「後発の量産品の方がいいと思う」と、答えた。教官は、それを聞いて「我が意を得たり」といった表情で次のように語った。

「試作品の方が、量産品より実際はお話しにならない程の高性能なのだよ」

かいつまんでいうとこういう事だ、試作品はその道一筋の技術屋が、自分で引いた設計図をもとに、最高の技術を持って、時間を惜しみなく投入して作られる。

それに対し、量産品は、大手電子部品メーカー勤務とは言え、決して技術に精通しているとは言えないパートのおばちゃん等が急いで配線するものだから、技術屋が時間を掛けて配線した仕事には遠く及ばない。 技術屋レベルでは成功していたミサイルも、量産ラインレベルでは不良品ばかりという事態になる。だから、量産品は、量産ラインのレベルまで要求性能を落した物に必然的になるという。

そして、工場勤務の人なら分かると思うが、工場の生産ラインというのは、絶え間ないコストダウンの要求にさらされている。今月、粉骨砕身の努力をしてコストダウンを達成しても、来月には、無情に更なるコストダウンを親会社から要求されたりする。これをクリアーする為に、生産ラインではベテラン作業員を首にしてパートを入れたり、外見上、点検不可能な部分で手抜きをする事になる。


こんな理由で、見た目は試作品と同じでも、耐久性や、動作の円滑さにおいて、量産品は、どうしても試作品に負けるものなのだ。

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