投稿者:ヤウジロウ
大学時代、「サチコちゃん」という名のミドリガメを飼っておりました。
そのサチコちゃんとの出会いは、当時の愛車、レットバロン(自転車)でかっ飛ばして約30分の所にあります、ゲームセンターのカメ釣りクレーンゲームでした。
今でこそ見なくなりましたが、ありゃ、きっと動物保護団体からクレームが来たんでしょうね。伊勢海老とか、生き物のクレーンゲームが流行った時代でありました。
それにしても、現場は悲惨なものでした。30cm位水が入った水槽の中で、助けを求め浮石に這い上がる子ミドリガメ達。しかも、浮石は広い水槽の中にたった一個。その光景はまさに一本の蜘蛛の糸に縋る、罪人の如く。15センチ四方の浮石に、カメの地獄絵が繰り広げられているではありませんか。左側からカメが這い上がれば、右側から浮石に乗っていたカメがこぼれ落ちます。そう、それは生死を賭けた「浮石争奪戦」なのです。負ければ溺死が待っている・・・溺れるには十分な水の量は、亀達にとっては血の池地獄に匹敵した事でしょう。
僕は、左から登って右から落ちる様を「コイツがカンダタかな」などと思いながら、暫く水槽に張り付いていた所、浮石にしがみ付く20匹ばかりのミドリガメ達が、訴えるような目線を僕に送ってくるじゃありませんか。
カメ達 「早く釣り上げて。こんな地獄のような生活はもう沢山なんだ。」
ミドリガメの熱い視線が、必至に僕に訴えてくる・・・
僕 「クッ、そんな雲りのない眼で僕を見ないでくれぇぇぇ。そんな目で見られたら、僕は・・・僕はぁぁぁぁぁ!」
財布に手が伸びる・・・
が、一回300円という巨額の値段が目に飛び込んで、
僕 「フッ、所詮この世は弱肉強食。強い者だけが生き残れるのだ!さぁ!這い上がって来い!そして明日の光は自分で掴んでみせるんだな!!」
と、この世の理を説いてやったわけです。虎は我が子を谷に突き落とすと言いますが、きっとこんな辛い肝なんでございましょう、
「強く生きるんだ!!強く生きるんだよ、マルコォ〜(謎」
と、内心で叫びながら、一回300円に財布の紐は硬く、その場をダッシュで後にした次第であります。
寮に帰り、夜、先輩のT山さんが帰って来る前に寝る準備をしていますと、
T山 「おぉ、ヤウまだ起きてたんか?ほれ、カメ買って来たぞ。」
そう言ってT山さんが部屋に入ってくるなり袋に入れられたミドリガメを突き出したじゃありませんか。
僕 「ど、どうしたんすか!?このカメ。」
T山 「ゲームセンターにカメ釣りゲームがあるべ?チョットやってみたんだけど、なかなか釣れなくてさ。捕れるまでやったら1200円も使っちゃったべや。」
なんか、もう、カメが欲しくて捕ってたんじゃないというのがバレバレな言い方。
しかし、その時のミドリガメの目は、
ミドリガメ 「どうだ!?やってやったぜ。明日を掴んでやったよ!」
ミドリガメよ、お前は本当にそれで良かったのか・・・?
カメに同情の目線を送っていると、
T山 「そうそう、名前はサチコで決ってるから、よろしく。」
何処かで聞き覚えのある名前・・・脳内の記憶を検索。
「サ・チ・コ・・・・・・(検索中」
検索結果
〜 サチコ 〜
T山さんの地元友達
つい最近T山さんが告白
フラレタばかり・・・
検索終了
気のせいか、涙で視界が見えないや。
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