THE・雑巾レース

投稿者:ヤウジロウ


これは小学校の掃除の時間のお話でございます。渡り廊下掃除の担当だった僕等の班は、彗担当と雑巾担当に分かれます。大体彗担当は女子、雑巾担当は男子。男子が雑巾を濡らしに行ってる間に女子が彗でゴミを集め、その後男子が濡れ雑巾で廊下を疾走するという掃除方法。

誰しも一度はやってのではないでしょうか。

そう、その名はTHE・雑巾レース!!


説明しよう。雑巾レースとは、対抗馬が廊下一列に並び、スタートの合図と共に濡れた雑巾に両手をつき、廊下の端まで行ったら壁にタッチして戻ってくるというものだ。

そう、楽しく掃除をする為に考えられた、雑巾がけ遊びなのだ。

この雑巾レースは奥が深い。雑巾を流しへ濡らしに行った時点から、闘いは始まっている。いわば雑巾はレースカー。よりベストな状態でなければ好タイムはでないだろう。もし水を軽く絞れば、雑巾に含まれた水で滑りがよくなる。しかし、逆に雑巾から出る水で踏ん張るはずの足が滑ってしまい、さほどスピードは出ない。かと言って、固く絞れば湿った雑巾と廊下の摩擦は高くなり、重くなる。つまり、自分の脚力に合った絞り具合を出さなくてはいけないのだ。

ヤウジロウの班は男子3人。つまり、倒すべき相手は2人。向こうの壁との距離、目測約20m。コース名は弾丸の渡り廊下。その間の障害は、防火扉の仕切り。

勢い余って突っ込むと、あの段差に手が詰まって転倒してしまう。つまり、その約2m手前からスピードを落とし、仕切りを突破するしかない。

そして何といっても、掃除の前に食べる給食が勝利の鍵だ。ここで食べ過ぎてしまうと、下向き且つ全力疾走の雑巾レースでは、途中で気持ちが悪くなるのだ。下向きなもんだから出ちゃいそうで怖い。つまり、試合前のボクサー然り、給食も腹八分目に食べてレースに備えなくてはならないのだ。


さて、渡り廊下に並ぶ3人。雑巾をスタンバイさせ両手をつきます。陸上でいうところのクラウチングスタートの格好。 「位置について」の合図で腰をあげ前傾姿勢をとる。

「スタート!!」

合図と同時に一斉に走り出す走者。そのスピードはほぼ互角。週変わりでサイクルする掃除場所で、唯一白熱した雑巾レースが味わえる場所は、この弾丸渡り廊下しかありません。

今日こそは勝!という思いがぶつかり合うのも、この雑巾レースの楽しみあってのもの。

その日の雑巾の具合もベスト。給食の食べ具合もベスト。体力ベスト。快調な滑り出し。今のところ2位ではあるが、前の走者のスピードは徐々に落ちてきている。

壁にタッチ。雑巾を裏返しゴールに向かって折り返す。先ほどまで前を走っていた走者も、折り返し地点では同着。ここから一気にスパートをかければ勝てる!!

壁を台にしてロケットスタートを繰り出す。それに負けずと追って来る相続者。行きで水分を失った雑巾は重くなっている。その上、太ももにかかる負担は帰りの方が倍。

行きの疲れ雑巾の重さ。

そのリスクがスピードと体力を徐々に、しかし確実に落としていく。もはや、帰りは気合の勝負。

ここで最終形態の、前を向かずに下を向いて疾走に切り替える。そう、これが世に有名はダウンフォース。前を向いて疾走した場合、目標を確認して走る事ができる反面、その体制は骨格的に無理があり、且つ空気抵抗が大きい。それに比べ、下を向いて走ることは、体に無理の無い体勢な上に、空気抵抗も少ない。(気がする) 確かに前方は見えなくなりはするが、帰りはブッチ切りのレースな為、かまう事はない!!

そのまま疾走した僕は、終に1位でゴール!! 全力疾走の疲れで暫くその体勢で息を切らしていましたが、フッと顔を上げると漆黒の闇。

「あれ?真っ暗だ。」

一瞬貧血か?と思ったが、若干の光を感じはする。これはまるで、布を被った時のような感じだ・・・というよりも、目の前に何か白い大きなものが…

と思ったその時、

「変態!!」

の一声と共に頭を叩かれた。

そう、顔を上げたその先は、彗で最後のゴミを集めていた女子のスカートの中だったのです。偶然その女子の真後ろにゴールした僕は、どうやらスカートの中に頭をスッポリと入れていたようです。

突然の出来事で何がなんだか分からないまま、慌てて顔を出す。そしてその女子から、強烈なビンタを頂戴いたしました。(事故なのに


まるでアニメかドラマのようなアクシデントではあったけど、え〜もん見させて頂きました。

どうせなら、あの時ついでに匂いも・・・グハァ!!(撲殺

このページのトップへ >>


※当サイトに記載される文章・画像等の転記は禁止したします。