ザ・ピンポンダッシュ

投稿者:ヤウジロウ


あれは、僕がまだ補助付き自転車を卒業出来ないでいた頃の事だった。その事の僕は近所でも有名な悪ガキで、一週間に8回は悪戯をし、一週間に10回は親に怒られたいた。

そんなある清清しい風の吹く日、僕は友達の家へ遊びに行ったことから物語りは始まる。

僕 「あ〜そ〜ぼ!!」

友達の家の前まで来ると、そう叫ぶ。そうすると中から、

友達 「今いく〜」と返事が返ってくるのだ。

・・・が今日は返事が無い。どうやら留守のようだ・・・

仕方なく、僕は家帰る。

僕の家の後ろには、3階建てのマンションが建っている。その前まで自転車をコギコギ帰ってくると、「今日はここで遊ぼう。」と、そんな事を思った。しかし、遊ぶ相手もいなくどうやって遊ぶか。

・・・考えた末に出てきたのがピンポンダッシュ

(幼稚園からピンポンダッシュとは、なかなかレベル高かったよなぁ〜)

ピンポンダッシュの面白さは、あのスリル感にある。全く知らない家のベル押して、ダッシュで逃げる!!家の人に見つかれば負け。もちろん、その家の人から怒られるというバツゲーム付だ。一人で遊ぶのには打って付けのゲームではないか。


という訳で、まずは階段に近い部屋のベルを押す・・・ピンポ〜ン

階段へダッシュ!!素早く階段に身を潜める。住人が出てくるのを影から見る為だ。案の定、住人はドアを開ける・・・が誰もしない。「おかしいな?」といった顔をしながら部屋の中へ戻っていく。これが最高に面白かった。

しかし、当時の僕は狡猾で、一度ベルを押した部屋は二度と押さなかった。何故ならば、二回も立て続けに起きれば、流石にピンポンダッシュだと勘付かれるからだ。その為、階段側の部屋を難易度LV.1とし、その奥をLV.2とする。こうする事で、同じ部屋の二度押しを避けると共に、避難場所(階段)から徐々に遠ざかる事で、逃げる距離も長くなる。という事は、発見される確立も上がる。

そう、スリル感もLV.UP!!


こうして、ピンポンダッシュは何時しか中盤、僕は廊下の真ん中へとやって来た。そこで、僕は今まで見た事のないベルを発見した。しかしそのベルには、住人が出てくる筈のドアが無い

また、今までのベルト違いボタンは赤く丸い。そして何よりも、ボタンを誤って押されないように、薄いフィルターのようなものでボタンが保護されている。


「これは何だろう?今まで見た事がないベルだ・・・押したら誰が出てくるんだろう。」

そんな好奇心から押さずには居られなくなり、何時でも逃げれるように軽く準備運動をし、僕は仰々しい赤いボタンを・・・ポチッ♪



ジリリリリリリリリリリ!!!!



逃げるよりも早く、マンション全体に響き渡る目覚し時計の様なベルの音。

そう、僕が押したのは非常ボタンだった。

慌てて引っ込んだボタンを元に戻そうとする。が、確りと奥までプッシュされた赤いボタンは、どうやっても戻りそうに無い。


マズイ、消防車が来ちゃう!!

救急車も来ちゃう!!

警察も来ちゃう!!

警察が来たら事件を起こした僕は捕まっちゃう!!


牢屋行きだ!!


それは嫌だ!!


パニックを起こしながら一目散にマンションを飛びだし、マンション前に止めてあった自転車に乗り、急いで家へ逃げようとする。しかし、そこで近所の人とバッタリと出会ってしまい、半ベソとその慌て具合から、 「あ〜、犯人はコイツだな。」と判ってしまったらしく、近所の人の手によって、僕は母のもとへと連行された。


その後、消防車が来る前にベルは止められ、マンションの一部屋一部屋に母と謝りに行ったのを覚えている。

あれ以来、その頃の記憶が今でも忘れられず、非常ベルを見ると何故か冷や冷やする。

「非常ベルって見てると押したくなるよね。」と言った友達にマジ切れした事もあった。


このトラウマは、いつか消えてくれるのだろうか・・・

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