投稿者:ヤウジロウ
後楽園と言えば、ヒーロー戦隊ショーで毎度お馴染みでございます。
今はもう聞かなくなりましたが、自分が子供の頃のCMと言えば、「後楽園で僕と握手!」というお約束。(今でも流れてるのかもしれませんが・・・)この台詞を聞けば、誰もが「ヒーローショー」だと直ぐに判るはずです。かく言う自分は、幼少の頃に家族でそのヒーローショーを見に行った事があります。で、CMで謳ってありますように、ショーが終わると我等がヒーロー達と握手と写真のサービスがあるのです。(思えば、何て気さくなヒーローなんでしょうかね)
僕の兄(当時、幼稚園年中位でしょうか?)はヒーローと一緒にポーズまで決めて撮った写真がアルバムに残っております。ですが、僕とヒーローとの写真は一枚もありません・・・
そう、奴等と一緒に写真を撮るのが心底 嫌 だったからです。
だってそうじゃありませんか。TVの中で毎週怪人と命の鍔迫り合!死闘を繰り広げてるんですよ!?そんな奴と握手でもしてみなさいよ、さっきまで舞台の上で「キーキー」言っていた怪人どもに、その握手の瞬間を見られでもしたら、間違いなく人質として誘拐されますよ。現にヒーローショーの始まりには、会場の子供達を敵戦闘員が拉致に近い形で舞台へ引きずり上げる所から始まるじゃないですか。
数人の子供が舞台で怪人達から名前や歳を聞かれている。
その時の僕は「あ〜、あいつ絶対怪人どもに殺されるよ。」とか思っていたのです。しかし、どういう訳か舞台上に上げられた子供達は、色々な大人の事情をこね繰り上げて、お土産を渡して客席へ返されます。
すると、怪人達がまた会場襲撃をする訳ですね。そんなもんだから、会場の皆でヒーローを呼ぶのです。が、ここで子供ながらに思うんですよ。だってね、司会進行役のお姉さんが
いや、いやいやいやいやいや・・・「もっと大きな声じゃないと来てくれない。」って
そりゃ残酷ってもんですよ。確かに解放はされましたがね、今しがた子供達が怪人に連れ攫われたんですよ!?さっさと来てよ!TVじゃいつも、怪人の予感とかして現場に駆けつけてるじゃないですか!
遅いって!!遅すぎですよ!!僕達怪人どもに皆殺しにされちゃうよ。
とか思ってました。
そんなもんだから、ヒーローと一緒に写真を撮るという行為は、怪人に
「僕を攫って。」
と、アピールしているようなもんですね。
そう、それはまさに自殺行為。
しかし親が、「折角来たんだから一枚一緒に撮ってもらいなさいよ。」って言います。
そりゃね、今思えばそりゃそうですよ。折角後楽園までショーを見に来て写真と握手をしなければ、デパートの屋上ヒーローショーと変わりないじゃありませんか。そう考えれば写真と握手を勧めるが親心ってもんです。
しかし、当時の僕は違います。「行っておいで」はむしろ
「お前なんて怪人の餌にでもなっておしまい。」
ですよ。
嫌がる僕に、後で「撮りたかった〜」とグズられちゃ困るってんで、ムリヤリ手を引っ張って、ヒーロの所へ連れて行こうとする。引きずられながら、近づいてくる戦隊レッド。 きっと、あの赤は敵の返り血を浴びて真っ赤なんだぁ〜、なんて思ったりなんかしましてね、そしてとうとう泣き出しちゃいました。
ここまで来ますと、母も「 あぁ、本気で泣くほど嫌なのか」と気付きまして、もう勧めることは無かったのですが、
兄が、兄がぁぁぁ〜!!
そう、冒頭でも書きましたように、兄はヒーローと写真を撮っているんです。
ヒーローの横に立ち、はいポーズ・・・カシャ!
「あ、兄が!東映の毒牙に掛かってしまわれたぁぁぁぁ」
まぁ、その後の兄は怪人に命を狙われる事も無く、今も平和に暮らしているので安心ですが。いまでも、いつ敵に襲われるかヒヤヒヤですよ。
でも当時の僕には、TV世界と現実世界の区別がつかなかったんですね。それでも、どこか傍観者側の意識の方が強かったようで、
「ヒーロー達と係わり合いさえなければ、僕には関係ないの事だ。」
と思っていたりしました。
どうやら幼少ながらにして、結構割り切った、夢が有るのか無いのか判らない子供だったようです。
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