投稿者:ヤウジロウ
いつも飲み会をやる面子は6人、大体が学生番号の前後と寮で同じ学科だった連中です。友達との飲み会は、大体誰かの家で酒を持ち合って飲んでいたのですが、この時は「たまには外で飲もうよ。」という事になり、平成14年の新年会は、札幌で飲むことになりました。
今回は飲みに出るということもありまして、「食い飲み放題」がメインです。
そこで発見したのが、3千円でしゃぶしゃぶ食い放題。
しゃぶしゃぶの一文字で、僕等の目的と眼つきは「飲み」から「食い」へ変わって行くのです。
当日、「今日はガッツシ食うぞォ!」と、意気込み十分な6人。しかし、お店について唖然しました。店の造りは純和風、BGMにシシオドシが「カッコ〜ン♪」、琴の音が静かに「タン♪タタタタタタタン♪」と鳴っているじゃありませんか。
こんな立派な店だとは微塵にも思っていなかった僕等、「本当に食い放題なのか?」と一抹の不安がよぎります。思わず、店員さんに確認なんかしちゃいましてね。恥ずかしい限りです。
個室に通され、しゃぶしゃぶの皿がテーブルに並んでいる、
「高い金払ってるんだから、食わなきゃ損。」
餌を目の前に本能と煩悩を剥き出しにした6人は、餓えたハイエナの様に箸と箸の鍔迫り合い。流石に野郎が6人もいますと、肉の減りも激しい激しい。二皿あった肉はあっと言う間になくなり、呼び鈴をプッシュし店員に追加の肉を頼みます。
暫くして肉二皿分を運んでくる店員さん。
しかし6人の野獣パワーで、追加の肉も早々と胃袋へと納められるのです。
そして事件は起こります。
始めは一枚摘まんではシャブシャブし、また一枚摘まんではシャブシャブし・・・と、繰り返していたのですが、終にまどろっこしくなりまして、箸でお肉を鷲掴みにし、一気に鍋に放り込む。
そんなものだから、先ほど運ばれた肉が、皿から1分もしないで無くなってしまう。(そりゃそうだ)
既に放り込んだ肉が鍋の中でグツグツと煮え、それを6人で摘まみます。
「これはもう、しゃぶしゃぶではないな。」
と、誰かが言いましたが、用は肉が食えればいいんです!日頃肉なんて拝んでないんですから!
皿の肉を鍋へ移す、直ぐに店員を呼ぶ。
(店員にしてみれば、今持って行った肉がもう無くてなっているのですから、まるで手品を見ている気分だった事でしょう)
そんなことを繰返していたら、終に店員さんは皿を1枚でしか持ってこなくなりましてね。(当たり前)
しかし、ドア側の席に座っていた僕がこんな事を許す筈も無く、その肉を早々に鍋に放り込むと呼び鈴を鳴らし、いつもよりも少し遅く来た店員さんに
ヤウ 「すいません。肉2つ追加で。」
優雅に流れるBGMなんてクソ喰らえ。
「コチトラ肉を食いに来てるんでぃ、チマチマした小細工してるんじゃねぇ!」
と、いった目線で店員さんに釘を刺す。
さて暫くしますと、注文の肉が来たのですが・・・凍ってる!?
終に厨房の肉が無くなった様子。その肉の表面には、やや氷がついておりまして、シャキシャキ感を保っています。
まぁ、凍ってても茹ちゃえば解凍できるでしょう♪ってなもんで、その肉も鍋へGO!
さてさて、順調に食い荒らしていたこの鷲掴み作戦には大きな欠点がありました。
それは、肉の灰汁で鍋の中がエスプレッソ状態になってしまうのです。その層は5cmはあったと思われます。きっとそれを取り出して「エスプレッソです♪」と出しても、気付かないで飲んでしまうであろう擬似っぷり。いや、初めは灰汁取りを担当していた人がいたんですよ?でも、もう鍋の中はお湯なのか灰汁なのか分からない状態で、灰汁取りなんて焼け石に水ってなもんです。
さて、流石の僕らもそろそろ限界。90分というタイムリミットも残りわずかとなり、ラストスパートで店員さんに3枚の追加をお願いしました。
(この時の「お前等まだ食べるんかい!!」と言いたげな店員の顔は忘れられません。)
合計15皿分の肉を食べ終え、満足して店を後にするのでした。
席が空き、片づけをする店員さんは、僕等のエスプレッソ鍋を見て、一体何を思った事でしょうか。
きっとその光景は、「未知なる生命体の誕生」を彷彿したに違いありません・・・
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