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酸素

投稿者:ヤウジロウ氏


皆さんが常日頃、毎日欠かさず行う事とは何だろうか。朝か起きて顔を洗う事だろうか。帰ってきたら手を洗う事だろうか。いや、それは無意識に行っている「呼吸」である。

呼吸とは空気を吸って肺に入れ、息を吐く。これが呼吸である。この一動作に何が行われているかというと、肺に入った酸素が二酸化炭素に変わる事である。そう、動物は酸素を吸って二酸化炭素を吐く。これは小学校でも習う極基本的なお話だ。

では、この二酸化炭素は誰が処理してくれているか。それは御存知の通り植物である。植物は光を受ける事で光合成をし、二酸化炭素を吸収し、酸素を生産する。自然界はこの循環によって成り立ってきた。それは今も昔も、そしてこれからも変わる事は無いと思われる。

しかし、人間の高度成長、産業革命の名の元に、大量生産が行われてきた。そこでは大型の機械を運転し、排ガスを多量に流す。豊かになった暮らしは人口を増やし、多くなった人は資源と土地を求め、森を切り開き開拓する。

我々人間の歴史は地球誕生から見ればほんのチッポケな歴史である。しかし、この爆発機的な人口増加、環境破壊が与える影響は地球にとっては、大打撃となっている。それが最近になって解かってきたのである。

冒頭で述べた我々の吸っている空気とは、主に何でできているか御存知であろうか。空気と言っても全て酸素ではない。その大半が窒素なのである。割合を云えば、窒素77%、酸素21%、残り2%がアルゴン、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、一酸化窒素、一酸化炭素などである。

近年、この酸素濃度が徐々に減りつつあることに気が付いた学者がいた。今でこそ21%ある酸素であるが、500年前ならば推定26%だったそうだ。つまり、単純計算で100年に1%減である。この調子で行けば、2100年後には酸素がなくなってしまう事になるではないか。

もちろん、その頃には科学も文明も進み、地球を捨て宇宙へ逃げているかもしれない。しかし、4103年には草も虫も鳥も命あるもの全てが居なくなる、砂漠の星となる事は間違いなさそうである。

かと言って、では酸素を増やせば良いではないかと思うかもしれない。しかし、高すぎる酸素濃度は動物にとって毒なのである。高濃度酸素の部屋に人間を入れたとしよう。するとその人間は、酸素が充満している筈なのに、呼吸をする度に咽を抑えながら、もがき苦しみ、目は充血し、額に血管を浮き上がらせ、耳鼻から血を垂れ流し、最後は真っ赤になった顔から、半分目が飛び出した状態で自然発火し、焼死する。

何故この様な現象が起こるのかというと、通常健康体が高い酸素濃度の部屋に入れられると、普通の呼吸をしてしまう。我々の体は、先ほど述べた酸素含有量21%の空気の中生活をしているのだ、つまり、今まで通りの呼吸をしてしまうと、多量の酸素が体内を駆け巡る事になり、体に大きな負荷がかかってしまう。

皆さんは酸素の実験を中学生の頃に学ばなかっただろうか。実験は酸素を閉じ込めた容器の中に、線香を入れるものだ。すると、線香はもの凄い火花を飛ばし燃焼する。そう、酸素が物を燃やす力が有るという実験だ。思い出して頂けただろうか。

我々の体の中でも、この実験と同じような現象が起こっているのだ。赤血球が肺から酸素を受けるとき、若干の熱を伴う。もちろん酸素量21%の世界ではその熱を感じ取る事は難しいが、例えるならば、太極拳のような静運動では心拍数が上昇する事はあまり無い。しかし、終わった後は体が温まっている。これは呼吸法にあるのだ。落ち着いて充分な酸素を体に取り入れることで、体は酸素を燃焼させる熱で温まってくる。酸素とは、なかなか凄い奴なのである。

さて、その酸素を多量に吸収してしまうと、体内の温度はみるみる上昇し始める。過度の酸素は毒であると述べたように、体は本能的にそれを察知、早く二酸化炭素に換え、外に排出しようとする。その為心拍数は活動限界まで上昇し、血流が早くなる。故に血圧も異常に上昇し、顔面が真っ赤になり、耳鼻から血を流す。目は充血し、体内の血管が膨張した為、筋肉が膨れ上がり眼球を外に押し出す。息をしているのに何故苦しいのかが判らない本人は、咽を掻き毟りながら、悶え苦しみ、最後は自分の酸素を酸化する熱で自然発火し、焼け死ぬのである。

この様に、酸素とは生きる為にも必要だが、多すぎると猛毒なのである。だが、その酸素が年々減っている。人間の活動限界濃度の最低は10%前後である。それ以下は苦しくて息ができない。逆に脳に酸素が供給されず、脳が死んでしまう。

しかし、酸素は上手に使うと体に秘められた力を引き出す事ができるのだ。よく、病院のドラマなどを見ていると、手術の時になどに酸素マスクをするシーンがあるだろう。あの時の酸素量は40%程度。通常の空気の2倍である。何故40%なのかというと、酸素をより多く体に取り入れる為であるのはもちろんだが、取り入れる事で体の代謝能力、自己回復力が高まることにある。

思い出してもらいたい。持久走大会を走り終えた後、貴方は息を切らしている。これは、激しい運動に体が多量の酸素を求めている証拠だ。走っている時に横腹が痛くなるのは、酸素が足りなくなる予兆だと思ってもらえればいい。つまり、横腹が痛くなると体が「酸素が足りていない」と訴えている証拠なのだ。

そう、酸素とは体力を使う時に多量に必要になるものである。という事は、大会でハードな運動をする時は、携帯用の酸素ボンベを持っていると良い。辛くなるとボンベから濃度の高い酸素を供給し、体に酸素を走らせる。筋肉痛の原因である乳酸は嫌気性であり、酸素を供給すると無くなる。

よくマラソン選手がトレーニングをする時に、酸素濃度の低い山頂で鍛える事で、空気の薄い環境に体を慣れさせ、下山した時の空気濃度との差で、その酸素供給量を稼ごうとするのはここから来ているものである。つまり、濃度が適度に高い酸素は体の活性を助け、潜在能力を引き出してくれるといっても過言では無い。

つまり、五輪マラソンで給水ポイントを設けている場合ではない。あそこには携帯用の酸素ボンベを置くべきなのである。もちろん各国のサポーターは、酸素の濃度を限界まで上げる事に専念するだろう。バナナ味などの香料も付けるだろう。

それだけでなく、酸素をより多く体内に運ぶ為、赤血球を多量に注入する筈である。こうする事で一呼吸で運べる酸素の量が増え、より勝負を優位に運べる。もちろん、体調や酸素ポイントまでの疲れにより、濃度の高い酸素にやられてしまう事も有るだろう。気が付いたら後続者が燃え始める事もあるかもしれない。

酸素とは我々の生命を維持する為に不可欠な存在である事は確かだ。だが、逆にその酸素に殺されることもある。普段我々が何気なく吸っている酸素だが、いつこの酸素が牙を向くか解かったものではない。

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